仲の良かった家族が、仲の良かった兄弟が、相続をきっかけに仲たがいをしバラバラになってしまうというのは何も小説やドラマの中だけの話ではありません。
裁判所の発行する司法統計によると、令和元年の一年間で家庭裁判所に持ち込まれた相続事件は12,783件にも上ります。
そんな相続をめぐる家庭内・家族内での争いを防ぐ手立てとして最もポピュラーな対策の一つが「遺言書」です。
しかし、一口に「遺言書を書く」と言っても
「遺言って何を書けるの、何ができるの?」
「遺言の書き方がわからない」
「遺言を作成するうえでのポイントは?」
と様々な疑問が生まれてきます。
そこで、本ページでは相続のプロ・専門家である司法書士が正しい遺言書の書き方を徹底的に解説します。
遺言書の詳細な書き方から遺言書でできること・書く際の注意点まで皆様の遺言書に対する様々な疑問を解消する一ページとなっていますので是非参考にしてみてください!
遺言書で達成できること
まず「遺言書って何を書けるの、何ができるの?」という疑問にお答えしていこうかと思います。主に遺言に記載することで行えることは以下になります。
できること①誰に財産を相続するかを決める
まずは最もポピュラーな遺言書でできることになります。
遺言書に書くことでどの相続人が相続するかを決めることができます。
法定相続人である親族以外にも、生前深いかかわりのあった人や財産を受けっとってほしい第三者を相続人として指定することもできます。
また、場合によっては家庭事情や個人的な事情により財産を相続させたくない人がいることがあります。
そのような場合にはその相続人を指定して相続権を剝奪することもできます。
できること②相続分を指定する
誰に相続させるかを決めたら、その相続人に「何をどれくらい」相続させるかも指定することができます。
法定相続人の相続割合は「法定相続分」として民法の中で相続割合がそれぞれ定められており、遺言書がない場合には基本的にその割合で遺産分割が行われます。
しかし、遺言書に「相続人Aに〇割の遺産を、相続人Bに△割の遺産を相続する」というように遺産分割の割合を指定することで、法定相続分と異なる割合で相続を行うことができます。
できること③遺産ごとに相続人を指定する
相続する遺産の種類が不動産や、預貯金・債券と多岐にわたる場合、単純に「誰に何割を相続する」という形では簡単に遺産を分割できないケースがあります。。
不動産、株式、債権、預貯金、その他動産といった遺産が混在する場合には、遺言書の中で「誰には何割」という形で記載しているとその解釈や価額の判断、不動産など分割できない財産の存在などによって相続人間でもめる危険性があります。
混乱を防ぐために、「相続人Aに不動産を、相続人Bには株式を相続する」とように相続させる遺産をあらかじめ遺言書に書いておくことでスムーズな相続を実現することができます。
できること④遺言執行者の指定
遺言書に書かれた内容を実行する役を担うのが遺言執行者になります。
遺言書のなかでこの、「遺言執行者」を指定することができます。
被相続人によって指定された遺言執行者には、民法により「相続を行う際に必要となる一切の行為」を行う権限が付与されます。
遺言執行者を指定しておくことで、
「遺言書が使用されずに相続が行われる」
「遺言書が見つかったものの破棄されてしまった」
「本来やらなくてはならない手続きが期限内に終わらなかった」
といった事態を防ぐことができます。
遺言執行者について詳しくはこちらのページをご覧ください。
以上が遺言書を書くことによって達成できる代表的なものになります。
上記の項目以外にも、「生命保険の保険金の受取人を変更する」「婚外子を認知する」といったこともできます。
遺言書でできることは皆様が思っているよりも多岐に渡ります。遺言書を作成しようと思っているものの何をどの程度まで書いていいのかわからないという方は専門家に相談してみましょう
ここまで遺言書の効果・達成できることについて解説させていただきました。
では、その遺言書の書き方はどうなっているのでしょうか?
遺言書の書き方
遺言書(自筆証書遺言)を書く際に必ず書かなくてはならない項目は以下になります。
書き忘れた場合に遺言書そのものが無効になってしまうような必須の記載事項もありますので確実に確認して法的に有効な遺言書を書きましょう。
①遺言者本人が自筆で書く
財産目録※を除き、遺言書はすべて遺言者が自分で書く必要があります。
偽造の疑いや改竄される危険性を排除するためにも、簡単に損傷を受けてしまうような材質の紙や、シャープペンシル・摩擦で色の消えるインクを用いたボールペンなどは使用を避けましょう。※2019年の「自筆証書遺言の方式緩和」により2019年1月13日より財産目録のみ手書きでなくパソコンで作成してよいというルールの緩和がありました。
②財産目録を作成する
遺言書のなかで誰に何をどれくらい相続させるのか決めるためにも、相続する財産に関して「何が・どれくらい」あるのかを正確に遺言書に記載する必要があります。
基本的に遺言書に従って相続が進んでいく際には、その遺言書に記載された財産目録にしたがって遺産分割が行われることになります。
万が一財産目録に記載漏れがあった場合、せっかく遺言書を作成したにもかかわらず、その漏れた財産をめぐって相続人間での相続トラブルに発展してしまう可能性もあります。
こうした悲劇を防ぐためにも遺産目録は正確に作成することをお薦めしています。
③相続財産ごとの相続人を正確に記載する
財産目録によって、「何が・どれだけ」あるのかは記載できました。次に大事になってくるのが「誰が・何を・どれだけ」相続するのかという点です。
遺言書を見たときに、相続人または遺言執行者が正確に「誰が何をどれくらい」相続するのかを理解できる状態にしておく必要があります。
例えば「相続人Aと相続人Bで預貯金4,000万円を半々にして相続すること」というように曖昧に記載しないようにしましょう。
正確性を期すためにも「相続人Aには甲銀行の定期預金1,000万円分とB銀行の普通預金のうち1,000万円を、相続人BにはB銀行の普通預金の内2,000万円を相続する」というように細かく正確に記載するとで理想です。
④日付を明記する
遺言書を書いた日付を年月日の形式で記載する必要があります。
書式に指定はありませんが、第三者が見た場合でも正確に把握できるように、20○○年○○月○○、または令和○○年○○月○○日という形で記載しましょう。
日付の記載を忘れた場合、その遺言書は無効になります。
そんなことだけで無効になるのかと思われるかもしれませんが、遺言書の正確性や有効性のためにも必要ですので忘れずに記載しましょう。
なお、複数の遺言書が存在する場合には、最新の日付のものが有効になります。
⑤自分の名前を署名する
当然ですが、誰が書いたのかを署名する必要があります。
必ず自筆での署名を行ってください。パソコンで作った文書のプリントアウトでは法的有効性は担保されませんので必ず自筆で書きましょう。
⑥捺印する
捺印がない場合も遺言書が無効になりますので必ず捺印しましょう。
なお、捺印は実印が良いとされていますが、認印または拇印でも認められます。
トラブルを避けたいという場合には実印が最も確実ですので、迷った場合は実印を用いることをお薦めしています。
遺言書はある程度しっかり作成すると複数枚にわたることがほとんどです。
そのような場合には、新たな偽造ページ追加の疑いを避けるためにも、あらかじめ契印(割印)を押しておくことがのぞましいでしょう。
以上が遺言書の詳しい書き方になります。
上記の点を漏らすことなく記載することで法的に有効な遺言書を作成しましょう。
注意点(遺言トラブル・無効事例)
上記のポイントを押さえたうえで、遺言書を書く際には以下の点に注意しましょう。
当たり前のようにわかっているつもりでも、こうした注意点をもう一度確認しておくことでより確実に遺言書を用いた相続を行えます。
適切に保管し紛失に注意する
「何をいまさら!」と思われるかと思いますが、遺言書は作成することがゴールではなく実際に相続の場で使用されることがゴールであることを考えると「紛失しない」ということが重要になります。
・遺族が遺言書を見つけられない
・遺族が遺言書を隠匿してしまう
・遺族が遺言書を破棄してしまう
といった理由から遺産相続紛争に発展する可能性もあります。
解決策としては、2020年の民法改正に際して開始した法務局の自筆証書遺言保管制度の利用があります。
これは公的機関である法務局が個人の自筆証書遺言(遺言書のこと)を保管してくれる制度になります。
少しの手続きと手数料の支払いが必要ですが、こちらの制度を使用することで遺言書に関連する相続トラブルを未然に防ぐことが可能になります。
自筆証書遺言保管制度について詳しくはこちらのページからご覧ください。
複数名での遺言書の作成はできない
遺言書は、民法第九百七十五条(協同遺言の禁止)より「遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。」と定められています。
たとえ配偶者であったとしても、連名で協同の遺言書を作成することはできません。
連名で遺言書を作成した場合、その遺言書は他の要件が満たされていたとしても法的に無効となってしまいますので連名・協同での遺言作成はやめましょう。
もし夫婦での遺言書を書きたい場合は、それぞれで一通ずつ遺言書を書きましょう。
法的に効力を持つ遺言書を書く
「遺言書の書き方」の章でも書きましたが、遺言書の捺印や署名はそれがないだけで遺言書の法的効力を失ってしまうほどに大事な要素です。
こうした大切な要素の抜け漏れは必ずないように確認を行いましょう。
また遺言書に書く文言に関して、法的に無効になる、相続の際に曖昧さが残りトラブルに発展するということのないように注意しましょう。
遺言書について悩みや疑問をお持ち方へ
今回はプロの士業資格者の目線から、初めて遺言書を書く人に向けて自筆の遺言書でできること、遺言書の書き方、書く際の注意点と細かく解説してまいりました。
一方で、当事務所では遺言書の作成や執行に関するご相談も数多く寄せていただいております。
・自筆で遺言書を作成したが法的に十分なものなのか不安である。
・遺言執行者に誰を指定すればいいのかわからない。
・死後の相続税申告のことまで対策しておきたい。
こうした遺言や相続に関する不安・悩みをお持ちの方に向けて、我々司法書士・行政書士 こんどう事務所では無料相談を実施しております。
相続分野に専門特化した司法書士が親切丁寧をモットーにお話を聞かせていただきます。
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