こんにちは 司法書士の近藤です。
もうお盆休みに入っている方もおられるかと思います。
お盆はご家族で集まる機会となるため、将来の相続の話などが話題に出やすいですね。
今回は、「相続した土地を手放したい」という方のための制度、「相続土地国庫帰属制度」 について解説します。
「親から相続した山林がある。売れないし管理もできない」
「遠方に使い道のない土地がある。固定資産税だけがかかっている」
こうした”いらない土地”に悩むご相談が増えています。
【結論】
相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈で取得した不要な土地を国に引き取ってもらえる制度です。
2023年4月にスタートし、2025年9月末時点で累計4,374件の申請、承認率は約94%。
審査手数料は1筆14,000円、承認後の負担金は原則20万円です。
ただし、建物がある土地や境界不明の土地は対象外など、厳しい要件があります。
相続土地国庫帰属制度とは?どんな制度?
相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈で取得した土地を、一定の要件を満たす場合に国が引き取ってくれる制度です。
正式名称は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」に基づく制度で、2023年(令和5年)4月27日からスタートしました。
これまで、相続した土地が不要でも、「相続してそのまま管理し続ける」か「すべての財産をまとめて相続放棄する」かの二択しかありませんでした。
この制度により、不要な土地だけを手放すという第三の選択肢が生まれたのです。
なぜこの制度ができたのか?
相続土地国庫帰属制度が創設された背景には、「所有者不明土地」の深刻化があります。
売却も利用もできない土地が相続されると、管理の負担や固定資産税の支払いを嫌って相続登記がされず、結果として所有者不明の土地が増え続けるという悪循環が生まれていました。
この制度は、将来の所有者不明土地の発生を予防するために、不要な土地を国に引き取る仕組みとして整備されたものです。
誰が利用できる?申請できる人の条件
相続または遺贈(相続人に対する遺贈)で土地を取得した方
共有地の場合は、共有者全員で共同申請が必要
相続人以外からの売買や贈与で取得した土地は対象外
相続登記をまだしていない場合は、先に相続登記を行うか、相続を証明できる書面を用意する必要があります。
どんな土地が対象外?引き取ってもらえない土地とは?
この制度は、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。
以下に該当する土地は申請が却下されます。
申請できない土地(却下事由)
建物がある土地(更地にする必要がある)
抵当権や地上権などの担保権・使用収益権が設定されている土地
他人による通路など、他人の使用が予定されている土地
土壌汚染されている土地
境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲に争いがある土地
審査で不承認となる土地(不承認事由)
一定の勾配・高さの崖がある土地で、管理に過分な費用・労力がかかるもの
地上に管理を阻害する有体物(廃棄物、車両、樹木等)がある土地
地下に管理を阻害する有体物(埋設物、古い基礎等)がある土地
隣地の所有者等と争訟が必要な土地
その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地
つまり、「更地で、境界が明確で、管理に特別な手間がかからない土地」が対象となります。
費用はいくらかかる?審査手数料と負担金
① 審査手数料(申請時)
土地1筆につき 14,000円(申請時に納付、返金不可)
② 負担金(承認後)
承認された場合、10年分の土地管理費用相当額を「負担金」として納付します。
宅地・畑・雑種地など:原則 20万円
市街地の宅地・農地:面積に応じて算定(20万円を超える場合あり)
森林(山林):面積に応じて算定(面積が大きいほど高額になる傾向)
負担金を期限内に納付すると、その時点で土地の所有権が国に移転します。
手続きの流れは?申請から帰属までのステップ
事前相談:法務局で制度の説明を受け、対象となるか確認する(無料)
申請書類の準備:申請書、土地の位置・形状を示す図面、写真、相続を証明する書類などを準備
法務局への申請:土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局に申請し、審査手数料(14,000円/筆)を納付
書類審査・現地調査:法務局の担当官が書類を審査し、現地調査を実施
承認・不承認の通知:要件を満たしていれば承認、満たしていなければ不承認の通知が届く
負担金の納付:承認通知を受けてから30日以内に負担金を納付
国庫帰属:負担金の納付をもって土地の所有権が国に移転。管理責任も国に移る
申請から承認までの期間は、おおむね半年〜1年程度かかるケースが多いです。
最新データ ~承認率は約94%~
法務省の統計(2025年9月30日時点)によると、制度の利用状況は以下の通りです。
累計申請件数:4,374件 帰属(承認)
件数:2,039件
審査完了案件の承認率:約94%
承認率が非常に高い点が注目されます。
要件を満たす土地であれば、高い確率で国に引き取ってもらえるということです。
また、2026年以降は国が引き取った土地の売却価格を最大9割引き下げる方向で検討が進められており、制度のさらなる活用拡大が期待されています。
相続土地国庫帰属制度を使えない場合の選択肢
要件を満たさず制度が利用できない場合でも、以下の方法で不要な土地を手放せる可能性があります。
隣地所有者への売却・譲渡:隣の土地の方が購入してくれるケースは少なくありません
自治体への寄付:公共利用が見込める場合、自治体が引き取ってくれることがあります(要確認)
不動産業者への相談:一般的な売却が難しい土地でも、専門の業者が対応できる場合があります
建物を解体して再申請:建物があるために申請できない場合は、解体して更地にすれば申請可能になることがあります
こんどう事務所のサポート
当事務所では、相続土地国庫帰属制度に関連する次のサポートを行っています。
制度の利用可能性に関するご相談・アドバイス
前提となる相続登記の手続き
申請に必要な書類の準備サポート 境界の確認に関するアドバイス(土地家屋調査士との連携)
制度が利用できない場合の代替策のご提案
豊田市・岡崎市を中心とした西三河エリアで、「相続した土地を手放したい」とお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。
📞0120-303-067
お問い合わせフォームはこちら
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まとめ
相続土地国庫帰属制度は、相続した不要な土地を国に引き取ってもらえる制度(2023年4月開始)
審査手数料14,000円/筆、負担金は原則20万円
建物がある土地・境界不明の土地などは対象外
審査完了案件の承認率は約94%と高水準
利用には相続登記が前提。まずは専門家に相談を
よくある質問(FAQ)
Q1. 山林(森林)でも国に引き取ってもらえますか?
はい、山林も対象です。ただし、負担金が面積に応じて算定されるため、広大な山林の場合は費用が高額になることがあります。また、管理を阻害する樹木や廃棄物がある場合は不承認となる可能性があります。事前に法務局での相談をおすすめします。
Q2. 農地でも申請できますか?
はい、農地も対象です。農地の場合は農業委員会への事前確認が必要な場合がありますが、制度上は申請可能です。負担金は面積に応じて算定されます。
Q3. 建物がある場合は利用できませんか?
建物がある状態では申請できません。建物を解体して更地にすれば申請可能になりますが、解体費用(木造住宅で100〜200万円程度)がかかります。解体費用と負担金を合わせた総コストで検討する必要があります。
Q4. 相続登記をしていなくても申請できますか?
相続登記が完了していなくても、相続を証明する書類(戸籍謄本等)があれば申請は可能です。ただし、2024年4月から相続登記が義務化されていますので、早めに相続登記も済ませることをおすすめします。
Q5. 申請から国に引き取ってもらうまでどれくらいかかりますか?
申請から承認までおおむね半年〜1年程度かかるケースが多いです。承認後、30日以内に負担金を納付すれば国庫帰属が完了します。余裕を持って準備を進めましょう。
➡️ 次回は、「所有者不明土地・建物管理制度とは?隣の空き家や土地で困っている方へ」について解説します。2023年スタートの新制度の使い方をお伝えします。