遺言執行者の職務②~就任承諾に関する裁判例~

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遺言執行者の職務②~就任承諾に関する裁判例~

みなさんこんにちは。

司法書士の近藤です。

さて、前回に引き続き、遺言執行者の就任承諾に関する論点です。

今回ご紹介する裁判例ですが、いわゆる清算型包括遺贈(相続財産のすべてを換価処分し、費用等を控除した後、全額を第三者に遺贈する)がなされた場合において、遺留分を有しない相続人に対し遺言執行者の就職通知をせず、財産目録の交付も行わず、事前の通知もなく相続財産を処分した遺言執行者に対して損害賠償を命じた、東京地判平成19年12月3日(判タ1261号)の事例(抜粋)です。 

「現行民法によれば遺言執行者は遺言者の相続人の代理人とされており(民法1015条)遅滞なく相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければならないとされている(民法1011条1項)ほか、善管注意義務に基づき遺言執行の状況及び結果について報告しなければならないとされている(民法1012条2項,645条)のであって,このことは 相続人が遺留分を有するか否かによって特に区別が設けられているわけではないから,遺言執行者の相続人に対するこれらの義務は相続人が遺留分を有する者であるか否か,遺贈が個別の財産を贈与するものであるか,全財産を包括的に遺贈するものであるか否かにかかわらず,等しく適用されるものと解するのが相当である。しかも、相続財産全部の包括遺贈が真実であれば,遺留分が認められていない法定相続人は相続に関するすべての権利を喪失するのであるから,そのような包括遺贈の成否等について直接確認する法的利益があるというべきである。したがって,遺言執行者は,遺留分が認められていない相続人に対しても,遅滞なく被相続人に関する相続財産の目録を作成してこれを交付するとともに,遺言執行者としての善管注意に基づき,遺言執行の状況について適宜説明や報告をすべき義務を負うというべきである。もっとも,遺言執行者から,遺贈をした遺言者の遺志が適正に行われることにつき重大な感心を有する相続人に対して,遺言執行者に関する情報が適切に開示されることは,遺言執行者の恣意的判断を排除して遺言執行の適正を確保する上で有益なものということができる反面、遺留分を有しない相続人による遺言執行行為への過度の介入を招き,かえって適正な遺言の執行を妨げる結果になることも懸念されるところであるから,個々の遺言執行行為に先立って常に相続人に対して説明しなければならないとすることは相当ではない。遺言執行者から相続人に対してなされるべき説明や報告の内容や時期は,適正かつ迅速な遺言執行を実現するために必要であるか否か,その遺言執行行為によって相続人に何らかの不利益が生じる可能性があるか否かなど諸般の事情を総合的に勘案して,個別具体的に判断されるべきものである。・・・遅くともそれまでには被告らが遺言執行者やその補助者に就任し,Aの財産目録の作成に取りかかっていたものと推認することができ,この相続財産目録(乙1号証)が初めて原告訴訟代理人に交付されたのは,本件訴訟が提起され第1回口頭弁論期日(平成18年12月11日)を迎える1週間前の同月4日であることは当裁判所に顕著な事実である。そうすると,被告らが相続人である原告らに対して相続財産目録を交付したのは,同目録を作成してから約1年半以上経ってからということになるが,これでは,遅滞なく交付したことにならないというべきである。」

要約すると、

1、原則、遺言執行者は、財産目録を作成して相続人に交付しなくてはならず、また、善管注意義務に基づき、遺言執行の状況及び結果について相続人に報告する義務がある。

2、上記相続人には、遺留分のない相続人も当然に含まれる。

3、もっとも、遺言執行者から相続人に対してなされるべき説明や報告の内容や時期は,適正かつ迅速な遺言執行を実現するために必要であるか否か,その遺言執行行為によって相続人に何らかの不利益が生じる可能性があるか否かなど諸般の事情を総合的に勘案して,個別具体的に判断されるべき。

ということになりります。

結論としては、ケースバイケースとはなりますが、原則としては、就職通知は遺留分を有しない相続人に対しても、遅滞なくしておいた方が良いということが言えそうです。

近藤

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